「かわいいこころ」レビュー&Youtube動画ご紹介!

はじめまして、岡崎直子と申します。
いきなり出てきてお前は何者だ?と思われたみなさま、スミマセン。
わたしは元雑誌編集者、現在弱小ながらYouTubeで動画配信をしている者です。
昔からの愛読書、寺門先生の「かわいいこころ」を動画で(勝手に)取り上げたところ、
旧友のakikoさんから
「動画見ました!実は最近寺門先生に体を見てもらっていて(中略)
先生に紹介したところ動画が素晴らしい!(後略)」
という奇跡のタイミングの嬉しすぎるメッセージをいただきました。
そしてあれよあれよと言う間に、こちらのコラムに寄稿させていただくことになったわけです。
約20年越しの愛読書の著者ご本人からレビューを褒めていただくなんて、ネット文化ってスゴイ。
寺門先生、ありがとうございます。
そしてakikoさんありがとう。

ちなみに、こちらの動画になります。

さて、このコラムをお読みのみなさまには釈迦に説法かと思いつつ、
わたしなりに「かわいいこころ」のブックレビューをさせていただきたいと思います。
「かわいいこころ」は、東洋医学や陰陽五行の難しい話がとてもポップかつ実用的にまとめられた一冊。
しかし、それだけのただの「便利な本」ではないのです。
ポップで奇妙な(みんな頭上に内臓を載せている。これがなぜかカワイイ!)魅力的なイラスト、
そして「かわいい」こころというタイトル、帯に記された「心=臓器の個性だって知ってた?!」というキャッチコピーに、
抗い難い魅力を感じたのを覚えています。あ、なんかこの本は違うぞ、と直感しました。

難しい話をわかりやすく解説する「How to本」は書籍のジャンルとして昔から定番ですが、
この本はそうした「目的のために効率よく結果を出す」ための本ではありません。
いや、もちろん目的はあるんです。
それは表紙に書いてあります。「気持ちよくスナオになれる85の方法」と。

気持ちよくスナオに。
しかし、ふつうの社会ではこういう曖昧なことは目標になりません。
「一億円稼ぐ方法」とか「脚やせする方法」とかと違って
一体どうなったら「気持ちよくスナオ」になれたのか、外からの基準で測ることができないからです。

だけど実際には、わたしたちは自分の人生を自分の「心」で生きています。
曖昧で、気まぐれで、繊細で、周囲に影響されて簡単に舞い上がったり傷付いたりします。
コントロールしきれません。厄介です。

しかし、そんな正体不明で実体のないもののように感じていた「心」には、実は実体がある。
そしてそれは「内臓」なんだ、という衝撃の宣言。
もちろん、東洋医学を知っている人ならば常識的な話なのでしょうが、
西洋化された日本でごく普通の学校教育を受けて育ってきたわたしは、
当時そんな考え方があるということを全く知らなかったのです。

わたしたちは自分の体をあたりまえに「自分の」体だと呼びますし、
そこには自然と「わたしの体なんだからわたしの命令に従うはず」という考えが潜んでいます。
でもよく言われるように、人間が自分の意志で動かせる体の筋肉はごく一部でしかなく、
心臓のポンプも、腎臓の濾過作用も、骨髄の造血も、なにひとつ自分の意志では動かせません。

動かせない、コントロールできない、にもかかわらず、
そうしたものにわたしの生命の根本的な原理がすべて委ねられている。

気づいてみれば当たり前のことですが、「自分の体は自分が動かしている」という考えが
いかに視野の狭い傲慢な思い込みだったのかということを、わたしはこの本で知ったのです。

わたしのゆらゆら動く「こころ」は、わたしよりずっと働きもので「生命」のエキスパートである内臓たちからの、
いわばメッセージのようなもの。
ネガティブな感情や不定愁訴に苦しんだとき、内臓の声をよく聞くことは、
生命にとって「気持ちよくスナオ」なリズムにチューニングするための大切なコミュニケーション。

そんな視点がひらかれると共に、成果主義の社会にとっては「厄介」な存在だった「ゆれやすいこころ」は、
けなげに生きようとしている「かわいいこころ」だと思えるようになったのでした。

この本のいちばん最後に書かれている、こんな言葉があります。

「『ひみつのこころ』の操作法とは、夢を昼間に観ることなのです」

夢は深層意識のあらわれだと言います。そこではわたしははっきりとした自我を持っておらず、
見るもの、触れるもの、感じるものに次々と変身してしまうような不思議な世界が展開されます。

普段無意識化されている夢の世界の中に自由自在なイマジネーションの発露があるように、
思考の及ばない体の中で複雑で高度な生命システムを循環させている内臓の世界がある。

昼間に夢をみる、とは、この深遠な無意識の世界に意識を向けて、
その不思議に光を当てていくことではないかと思うのです。

「わたし」という生命は、わたしが知っている以上に広大で、自由で、面白いものなのかもしれない。
「かわいいこころ」はわたしにとって、そんな視野を開いてくれた一冊です。

岡崎直子